休み場所
すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、
わたしのところに来なさい。
わたしがあなたがたを休ませてあげます。
マタイの福音書11章28節
以前、友人のシスターから、お便りと数枚のコピーが送られて
きました。
読み終わったあと、なんだかとても心が温かくなりました。
『心の重荷一時預かり所』~神様からのダイレクトメール~ 「マリア セシリア」
・・こんばんは。「心の重荷一時預かり所」からまいりました集配係のものです。
あなたのお荷物をお預かりするために伺いました。
もう面会時間がとっくに過ぎているでしょう?守衛さんに見つからないように、
この病室までたどり着くのは、ちょっとしたスリルでしたよ。
おや?あなたは「そんなところに頼んだ覚えはない」っておっしゃりたそうなご様子ですねぇ。
それに「一時預かり所」に集配係がいるなんて話は聞いたことがないって不思議がって
いらっしゃるようだ。
ごもっとも。でもうちに御用がおありの方は、あなたと同じようにとても疲れていらして、
ご自分で荷物を預けにいらっしゃれない方ばかりなんですよ。
さっき、あなたはこの病室の窓から夜空を見上げながら、とても悲しそうなお顔で、
深いため息をおつきになっていましたねぇ。
あなたのほほに光る一粒の涙を見て、とても心を痛めたうちの所長が、私にすぐ
あなたをお訪ねするようにと、この病院までの地図を渡してくれたというわけです。
所長は、天体望遠鏡もかなわないほど、すばらしくよく見える目をしていましてねぇ。
どんな遠く離れた方の、どんな小さな涙でも、みんな知っているんですよ。
ですから、我われ集配係の者は毎日、西へ東へと休む暇もなく走りまわっています。
私どものところは、どこかの国の「手荷物一時預かり所」のように、〝危険物お断り〟なんて
野暮なことは言いません。
今にも爆発しそうな怒りでも、手をふれただけで壊れてしまいそうな悲しみでも、
全てお引き受け致します。
それに、〝期限を過ぎた物は処分します〟なんて融通のきかないことも言いません。
預け主の方が、十分、元気を取り戻して下さる日まで、何ヶ月でも、何年でもお預かりいたします。
お預かりした荷物も、ただ暗い倉庫にしまいこんでおくのではないのです。
所長が、一つ一つ丁寧に調べて、破れているところ、傷ついているところは、「愛色」の糸で
きれいに縫い合わせ、修理の終わったものは、私たちが「思い出色」のヴェールでそうっと包み、
お返しできる日まで大切に保管致します。
つまりお客様からお預かりした「悲しみ」や「苦しみ」は再びお手元にお届けする時には、
みんな「美しい思い出」にかわっている、という寸法です。
え?料金ですか。もちろん無料です。
それどころか、実はね、私は知っているんですよ。所長が修理をする時に、こっそり小さな箱を一緒に
縫いこんでいるのを。
それには、短いメッセージを書いたカードが添えてあります。
「こんなに重い荷を背負って、よく今日まで頑張って歩いてきましたねぇ。
これは私からのプレゼントです。」
箱の中身は、人によって違います。「希望」であったり、「安らぎ」であったり、
「勇気」であったり・・。
その方に一番ふさわしいものを、所長が選んで差し上げるのです。・・・~中略~
私たち集配係はご覧のように、ローマンカラーのユニホームを着ていますし、「預かり所」は
目印として、屋根の上に大きな十字架を立ててありますから、すぐお分かりになりますよ。
もし、私や、私たちの家を見つけることがお出来にならなくても大丈夫。
所長のところにお電話を下されば、あなたのところへ伺います。
「電話番号がわからない」ですって?
いえいえそんなことはありません。あなたは所長といつでも、どこででもお話しができるホットラインをお持ちになっているんですよ。
電話のかけ方はとても簡単!両手を合わせて、静かに目を閉じて、心の中で呼んでみて下さい。
「神さま、あなたに会いたい!」って。
おやおや、すっかり長居をしましたねぇ。もうすぐ消灯時間ですね。
ではあなたのお荷物をいただいて帰りましょう。
「心の重荷」をすっかり私どもにお預けになったのですから、
きっと今夜はぐっすりとお眠りになれますよ。
楽しい夢をご覧になれるといいですねぇ。
じゃぁ、おやすみなさい。